はじめに
インフラとかクラウドって、名前はよく聞くけど、ちゃんと説明しようとすると意外と難しい。
しかも、アプリ開発や自動化ツールに夢中になっていると、この基盤部分はつい後回しになりがちだ。
でも、どんなに便利なツールもサービスも、必ずどこかで「動かす場所」が必要になる。
だからこそ、物理インフラやOS、仮想化、クラウドといった“土台の技術”は避けて通れない。
この記事では、インフラとクラウドの基礎を自分なりに構造的に整理してみた。
まだ詳しいわけじゃないけど、「全体を見渡す地図」として、章ごとに要点と用語をまとめている。
自分と同じく、これから学ぶ人の足場になればと思っている。
📘 定義:インフラ・クラウド = 情報システムの基盤を構成するハードウェア、ネットワーク、OS、仮想化、クラウドサービスなどの技術領域を指し、ITサービスの安定稼働とスケーラビリティを支える中核的要素である。
物理インフラとネットワーク基礎
ITシステムの基盤となる物理インフラとネットワークは、クラウドや仮想化が進んでも依然として重要である。サーバやストレージ、データセンター設備、ルータ、スイッチといったハードウェアは、アプリケーションの実行やデータの保存・転送を物理的に支える存在である。ネットワークにおいては、IPアドレッシングやDNS、DHCPといった通信の基本プロトコル、ならびにLANやWANといった構成要素の理解が前提となる。冗長構成や負荷分散(ロードバランシング)、帯域制御といった運用技術は、可用性と性能の確保に直結し、障害対応やセキュリティ対策の土台ともなる。
関連語 | 分類・用途 | 意味・機能・文脈 |
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サーバラック | 物理装置 | データセンター内に設置される筐体で、複数のサーバ機器を収納する |
UPS(無停電電源装置) | 電源管理 | 停電時にも電源供給を維持するための装置 |
冷却装置 | データセンター設備 | 熱暴走を防ぐためにサーバルームの温度を一定に保つ装置 |
スイッチ | ネットワーク機器 | LAN内の通信を制御し、複数機器を接続する装置 |
ルータ | ネットワーク機器 | 異なるネットワークを接続し、通信経路を制御する装置 |
IPアドレス | 通信設定 | 各機器に割り当てられる識別番号、通信先を指定するために使用 |
DNS(Domain Name System) | 通信変換 | ホスト名とIPアドレスの変換を行うサービス |
DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol) | 通信自動化 | IPアドレスなどを自動的に配布するプロトコル |
LAN(Local Area Network) | ネットワーク構成 | 限定的な範囲で構築されるネットワーク |
WAN(Wide Area Network) | ネットワーク構成 | 地理的に広範な範囲をカバーするネットワーク |
冗長構成 | 可用性対策 | 機器や経路の多重化により障害時の継続運用を可能にする構成 |
ロードバランサ | 負荷分散 | 処理要求を複数サーバに分散させ、応答性と耐障害性を確保する |
オペレーティングシステムと仮想化技術
IT基盤の中核を担うオペレーティングシステム(OS)と仮想化技術は、リソース管理と柔軟な環境構築を支える不可欠な存在である。OSは、ハードウェア資源(CPU、メモリ、ストレージなど)を制御し、アプリケーションの実行環境を提供する。LinuxやWindows Serverなど、用途に応じた多様なOSが存在する。仮想化では、物理マシン上で複数の仮想環境を構築可能にし、サーバ統合、テスト環境構築、クラウド基盤の提供などに利用される。Hypervisor(ハイパーバイザ)による仮想マシン管理、コンテナ技術(Dockerなど)による軽量な仮想化などもこの章で扱う。
関連語 | 分類・用途 | 意味・機能・文脈 |
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オペレーティングシステム(OS) | 基盤ソフト | ハードウェア資源を管理し、アプリケーションを動作させる基本ソフト |
Linux | サーバOS | オープンソースのUNIX系OS、サーバ用途で広く用いられる |
Windows Server | サーバOS | マイクロソフト社の企業向けOS、GUI操作に強み |
仮想化 | リソース分離 | 物理リソースを論理的に分割し、独立した環境を構築 |
Hypervisor | 仮想化技術 | 仮想マシンの生成・管理を行うソフトウェア層 |
VMware ESXi | 仮想化基盤 | 商用のハイパーバイザ型仮想化ソフト、業務利用に多い |
KVM(Kernel-based Virtual Machine) | 仮想化基盤 | Linuxカーネル内蔵の仮想化機能、オープンソースで普及 |
仮想マシン(VM) | 環境構築 | ハードウェアを仮想化し、複数の独立環境を提供 |
コンテナ | 軽量仮想化 | OSレベルでアプリを分離・実行する高速起動可能な技術 |
Docker | コンテナツール | コンテナ環境を構築・配布・実行できる標準的ツール |
ホストOS/ゲストOS | 仮想構成 | ホストは実機上のOS、ゲストは仮想マシン内のOS |
スナップショット | 状態保存 | 仮想マシンの状態を保存・復元できる機能 |
クラウドサービスと利用モデル
クラウドサービスは、ITインフラの柔軟性・拡張性を飛躍的に高めた技術革新であり、その提供形態や利用モデルの理解は現代のインフラ設計に欠かせない。クラウドは提供方式により、IaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service)に大別される。運用形態としては、パブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウドといったモデルがある。主要なクラウドベンダー(AWS、Azure、GCPなど)は、これらのモデルを基に多数のマネージドサービスを提供しており、システム構築の高速化と運用負荷の軽減に寄与している。
関連語 | 分類・用途 | 意味・機能・文脈 |
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クラウドコンピューティング | 提供形態 | インターネット経由でリソースを提供・利用する仕組み |
IaaS(Infrastructure as a Service) | 提供モデル | 仮想サーバやストレージなど、基盤リソースを提供 |
PaaS(Platform as a Service) | 提供モデル | アプリ開発用の実行環境やミドルウェアを提供 |
SaaS(Software as a Service) | 提供モデル | ソフトウェア機能そのものをWeb経由で提供 |
パブリッククラウド | 運用形態 | 外部クラウド事業者が不特定多数に提供する共有型クラウド |
プライベートクラウド | 運用形態 | 組織専用に構築・管理されるセキュアなクラウド環境 |
ハイブリッドクラウド | 運用形態 | パブリックとプライベートを連携させた混在環境 |
AWS(Amazon Web Services) | ベンダー | 世界最大のクラウドプロバイダ、多数のサービスを提供 |
Microsoft Azure | ベンダー | Microsoft社のクラウド、Office製品との統合に強み |
Google Cloud Platform(GCP) | ベンダー | Googleのクラウド、AI・データ分析系に強み |
マネージドサービス | 運用支援 | ベンダーが運用管理まで担うクラウドサービス形態 |
クラウドネイティブ | 開発思想 | クラウドの特性を活かしたアーキテクチャ設計手法 |
インフラ構築とIaC(Infrastructure as Code)
インフラ構築はかつて手動作業に頼っていたが、現在ではIaC(Infrastructure as Code)によって自動化が進んでいる。IaCとは、インフラ構成をコード化し、再現性のある構築・管理を可能にするアプローチである。これにより、人的ミスの低減、構成のバージョン管理、複数環境の一貫性維持が実現される。主なツールにはTerraformやAnsible、CloudFormationなどがあり、それぞれ異なる特徴を持つ。CI/CDパイプラインとの統合も一般化し、インフラとアプリケーションを同時に自動デプロイするDevOps的な運用が浸透している。
関連語 | 分類・用途 | 意味・機能・文脈 |
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IaC(Infrastructure as Code) | 自動化手法 | インフラ構成をコードとして定義・管理するアプローチ |
構成管理 | 運用技術 | システムの状態や設定を一貫して管理する手法 |
プロビジョニング | 展開手順 | サーバやリソースを必要に応じて自動的に構築・設定する作業 |
Terraform | IaCツール | HashiCorp製の宣言型構成管理ツール、クラウド横断で利用可能 |
Ansible | 自動化ツール | Red Hat製のエージェントレス構成管理ツール |
CloudFormation | IaCツール | AWS専用の構成定義テンプレートツール |
CI/CDパイプライン | デプロイ技術 | 継続的インテグレーション/デリバリの自動化プロセス |
GitOps | 運用概念 | Gitリポジトリを単一の信頼源とする運用モデル |
YAML | 記述形式 | 構成ファイルに使われる可読性の高いマークアップ言語 |
モジュール化 | 再利用性 | 再利用可能なテンプレート単位で構成を整理 |
依存関係管理 | インフラ制御 | リソース間の順序や関係性を正しく構築・制御する手法 |
自動ロールバック | 保守性 | 異常時に構成を前の安定状態に自動復元する機能 |
監視・障害対応とセキュリティ対策
ITインフラの安定運用には、常時の監視体制と即応的な障害対応、さらに強固なセキュリティ対策が不可欠である。監視は、リソースの使用状況、応答時間、ログの異常検知など多岐に渡り、Nagios、Zabbix、Prometheusなどのツールが活用される。障害対応では、アラート通知、原因分析、復旧手順の整備が重要である。一方、セキュリティでは、ファイアウォールやWAF(Web Application Firewall)、アクセス制御、パッチ適用など、多層的な防御が求められる。これらはクラウド環境でも同様であり、SOC(Security Operation Center)やSIEM(Security Information and Event Management)を通じた統合管理も進んでいる。
関連語 | 分類・用途 | 意味・機能・文脈 |
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システム監視 | 運用 | サーバやアプリケーションの状態を常時確認し、異常を検知する行為 |
Nagios | 監視ツール | オープンソースのシステム監視ツール、アラート送信に対応 |
Zabbix | 監視ツール | リアルタイムで多数のホストを監視できるOSS(オープンソースソフトウェア) |
Prometheus | 監視ツール | 時系列DBを用いたモニタリングツール、Grafanaと連携可 |
ログ監視 | 障害対応 | システムログやアプリログを解析して障害兆候を把握 |
アラート通知 | インシデント対応 | 異常検知時にメールやSlack等で通知を行う機能 |
インシデント管理 | 運用体制 | 障害や攻撃を記録・対応・再発防止策に活用するプロセス |
ファイアウォール | セキュリティ | 通信をフィルタリングし、不正アクセスを遮断 |
WAF(Web Application Firewall) | セキュリティ | Webアプリに特化した攻撃(SQLインジェクション等)を防御 |
パッチ管理 | 脆弱性対策 | セキュリティ更新を適切なタイミングで適用する作業 |
SIEM(Security Information and Event Management) | セキュリティ統合 | ログやイベント情報を一元分析して脅威を可視化 |
SOC(Security Operation Center) | セキュリティ体制 | 組織内のセキュリティ監視と即時対応を担う専門部門 |